JT杯 渡辺明棋王ー羽生善治竜王戦を振り返ります。
戦型は角換わりの△65歩型。先日の竜王戦(羽生ー広瀬戦)で羽生竜王は先手を持っていますが、後手の作戦が有力とみて採用したということでしょう。
対して渡辺棋王は図から▲35歩、△同歩、▲45桂と仕掛けました。昨年のA級順位戦(渡辺ー豊島戦)でも豊島八段相手に同様の仕掛けを敢行しています。進んで図2。
図の△81飛車が新手。△84飛車と四段目に利かしたくなるところですが、前例では▲71角が厳しかったため、▲71角を消しておくのが重要ということですね。以下、▲74歩、△同銀、▲24飛車に△44角が攻防の一手。
そこで①▲33歩と打ち、△同桂なら▲34歩、△45桂、▲同歩、△55角、▲33歩成~▲74飛車を狙う手もありましたが、本譜は②▲29飛車。以下、△76歩、▲88銀と壁銀を強要し、△24歩、▲同飛車、△23銀、▲29飛車、△24歩と銀冠を構築して後手もまずまずといったところ。進んで図3。
図では①▲33角成、△同飛車、▲同飛車成、△同玉と清算して、▲35桂と置いておけば先手が寄せ切れそうな形でした。
本譜は②▲32歩、△同飛車、▲44桂、△同金、▲33歩に△55金と踏み込んで、▲32歩成、△52玉、▲55銀、△56桂が厳しく難解な形勢に。進んで図4。
図では①△68金と打てば、▲同金、△同馬は必死級で、後手玉は詰まず、後手勝ちが濃厚でした。
本譜は②△75桂に▲42と、△同玉、▲44飛車、△52玉、▲74飛車、△69角、▲75飛車(図5)と桂を抜いて粘ります。
図では①△75同馬であれば、後手玉は寄らず、先手玉は△78角成、▲同銀、△87歩、▲同玉、△77飛車、▲同桂、△同歩成、▲同銀、△65馬、▲76歩、△75桂以下の詰めろとなっており後手勝ちでした。
本譜は②△36角成とこちらの飛車を取りましたが、瞬間先手玉が固くなり、▲64桂、△42玉、▲44銀以下、上から押さえて先手の勝ちとなりました。(投了図)
最新形の序盤から難解な終盤戦を制した渡辺棋王が決勝進出を決めました。