竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局 広瀬章人八段ー深浦康市九段戦を振り返ります。
第1局に勝った深浦九段が勝って竜王戦挑戦を決めるか、広瀬八段がタイに戻すか。戦型は相居飛車の力戦型となりました。
図の△53銀は珍しいですが、よくある△73銀型の飛車先を切らせる戦法(参考:稲葉―渡辺棋王戦)と比較すると、△64銀からの急戦を見せながら、持久戦にも対応しやすいという意味があるのかもしれません。進んで図2。
先手は流行の雁木模様に構えたのに対し、後手は矢倉模様。どちらかと言うと先手が深浦九段好みで、実際先手の方が模様が良さそうですが、後手番なので多少は仕方ないですかね。
図から▲25飛車(▲85飛車の狙い)と動きを見せ、△55歩、▲同歩、△24銀、▲29飛車、△55角以下、進んで図3。
5筋を押さえて、▲45歩で先手好調。
図以下、△同歩、▲同桂、△86歩、▲同歩、△44歩、▲65桂、△62角、▲46角、△92飛車で先手がかなり良いようにも見えますが、意外にそこまで差は開いていないようです。進んで図4。
図では①▲55飛車が好手で、次の▲85飛車を防ぐ「Ⅰ」△73桂打にはそこで▲54銀と打てば、△86角の飛び出しが飛車に当たりませんでした。「Ⅱ」△54桂には、▲85飛車、△46桂、▲81飛車成と成りこんで先手優勢。
本譜は②▲54銀、△86角に、1回▲56飛車の途中下車が痛く、以下△54金で後手優勢となりました。進んで図5。
図の△55桂が常にある手で、先手陣の弱点を突いて非常に厳しいです。
図以下、▲64馬(△同飛車なら▲55飛車)、△67桂成、▲53馬、△42銀、▲同馬、△同金、▲67金、△87飛車成で後手優勢。しかし、ここから先手が粘ります。進んで図6。
図では①△73角が絶好の一手でした。先手からの▲55飛車や▲75飛車を防ぎつつ、次に△55桂を見ています(▲65飛車にも△48角成、▲同玉、△64金)。指されてみると絶品ですが、攻める手ばかり目が行くので中々こういった手は気づかないですね。
本譜は②△79角でこれでも後手優勢ですが、以下、▲77金、△88角成、▲78銀打で粘られます。進んで図7。
図では①▲同銀、△同馬、▲同桂で、「Ⅰ」△68銀には、▲46銀、「Ⅱ」△39龍には▲49歩で先手の受け切りでした。
本譜は②▲48玉に、△67成桂、▲同銀、△69龍、▲88龍、△45桂、▲49桂、△37銀、▲同桂、△同桂成、▲同玉、△39龍、▲38銀(図8)
図では①△45金が好手。一見ぼんやりしていますが、△25桂~△37金~△38龍から88龍を抜く筋があります。以下、▲64角の攻防手も、△25桂、▲47玉、△37金、▲同角(▲同銀、△同桂成、▲同角は△49龍、▲48角、△38銀、▲37玉、△33桂で必死)、△同桂成、▲同玉、△25銀で寄り筋となります。
本譜の②△45桂は自然ですが、▲46玉、△57桂成、▲54桂、△53金、▲57玉、△54金、▲82龍、△42桂、▲49銀打で難解な形勢に。進んで図9。
図から△65桂が取られそうな駒を活用する絶好の一手。▲同歩に△66香で後手優勢。
以下後手勝ちと思われましたが、▲64馬、△67香成、▲同玉、△44角、▲78玉、△95桂、▲46香、△同金、▲55金に①△同角としたため、先手優勢に。代えて、②△66銀、▲44金、△同歩なら後手勝ちでした。
本譜は以下先手勝ちとなりました。2転3転の大熱戦を制した広瀬八段がタイに戻し、決着は最終局に持ち越しとなりました。
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