竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局 深浦康市九段ー広瀬章人八段戦を振り返ります。
戦型は意外な先手急戦矢倉。深浦九段はここ最近雁木ばかり採用していましたが、この竜王戦では準決勝の三浦戦では後手横歩取り、本局で矢倉と意表を突く戦型を選択しており、作戦巧者ぶりが伺えます。
図から△64歩と仕掛けを警戒した手に対し、▲57銀(図2)がまた意表を突く手。
以下、△65歩に▲45歩から攻めて行きましたが、矢倉から銀を引いて角道を通して攻めて行く構想は、竜王戦の増田ー藤井聡太戦でも出ており、現代将棋においてはこういった柔軟性が必要になってきていることが伺えます。進んで図3。
図で①△87歩、▲同金、△86角は、▲同金、△同飛車に「Ⅰ」▲87歩(取ると▲96角の王手飛車)もありますし、「Ⅱ」▲77角、△87飛車成、▲44角、△同金、▲同角、△67龍、▲68銀打、△78金、▲59玉、△37角、▲48歩、△28角成、▲58銀の激しい変化でも先手がやれるようです。
本譜は②△85歩。対して、▲同歩、△66歩、▲同角(図4)とあっさり進めるのが好手でした。
図から△85飛車で後手の狙いの十字飛車が実現し、先手がハマってしまったようですが、以下▲86歩、△45飛車、▲46銀左、△65飛車、▲45歩、△33銀、▲34歩、△22銀(図5)
先手は桂損するものの、手順に後手を壁銀にさせたのがかなりのポイントで先手が優勢になっています。ここまでの一連の手順は、大局観が良過ぎて感動しますね。
図以下、▲24歩、△同歩、▲23歩、△同金とさらに形を乱し、▲44歩、△5金、▲77桂、△63飛車、▲45銀と圧力をかけていきます。進んで図6。
△54桂が見えていますが、構わず▲46銀と出て攻めていきます。先手に桂を渡すと▲75桂や▲55桂の筋が厳しいため、後手はいかんともしがたい形勢に。進んで図7。
図から▲66銀が実戦的な好手。多少駒損しても6筋の嫌味を消せば逆転されづらくなります。以下は先手勝ちとなりました(投了図)。
深浦九段が完璧な指し回しで完勝。竜王挑戦に後1勝としました。
次局も序盤から目が離せません。
深浦棋士らしい完封劇場ですね。連勝で頑張ってほしい