NHK杯の杉本(和)ー斎藤(慎)戦を振り返ります。戦型は三間飛車となりました。
ここから▲56銀と出て、△44銀に▲75歩と石田流を目指します。進んで図2。
お互いの銀があまり見ない位置にいますが、ここから▲46歩、△同銀、▲54銀、△52金、▲65歩と後手の銀を狙いつつ先手の銀を前に出します。進んで図3。
△56歩が手筋で、▲同歩なら△53歩で銀を確保できます。以下、先手も▲72歩と手筋を放ち、△同飛と取らせてから▲56歩と戻すことで、△53歩には▲44角~▲61銀の割り打ちを見せます。進んで図4。
ここから▲64歩、△同歩、▲74歩がよく出てくる振り飛車の手筋。
単に▲74歩では、△同歩、▲同飛に△73歩で追い返されてしまいますが、▲64歩、△同歩の交換を入れることで、△73歩に▲64飛と回れるようになります。進んで図5。
この局面は今にも戦いが始まりそうですが、後手としては52金が浮いているのが気になります。このような場合は、離れ駒を無くすのが戦いのコツで、本譜は△51歩としました。代えて△42金寄も有力でした。進んで図6。
図は▲63歩と垂らし、将来的に▲62歩成、△同金から▲43銀成のような筋を狙っています。そのことを踏まえると、ここは△33銀引と固めておくのが有力でした。
先ほどの離れ駒を無くすという考え方と同じで、将来的に離れ駒になりそうな駒は予めケアしておくのが勝率アップにつながります。
本譜は△84歩と催促しましたが、放っておいても▲73歩成から攻めてきそうなところですので、一手パスに近くなってしまいました。進んで図7。
図は△33銀と引いたところですが後手を引いてしまったのが辛いところ。ここで▲33角成が当然ながら好手で、△同角に▲32銀とからみ、後手玉を薄くします。進んで図8。
ここで△32銀としましたが一手の価値が低く先手優勢になりました。代えて△85角として▲51飛成なら△61飛といったように玉が薄くならないように指せば大変でした。進んで図9。
ここは▲33角成と切って、△同銀左なら▲31金、△同銀右なら▲43銀といった形で食いつけば先手優勢でした。本譜は▲44歩に△56角成が入ったのが大きく(▲43歩成は△55馬)後手が持ち直しました。
以下紆余曲折を経て図10。
▲13歩が穴熊崩しの手筋で、△同銀に▲31金でいよいよ最終盤。進んで図11。
ここで▲33角成が痛恨の逸機。代えて、▲15香を決めてから▲33角成であれば、△同金に▲13歩で詰みでした。角を切ってからでは△64角の筋があるため、寄りません。進んで図12。
△64角から31銀を抜いて後手が寄らなくなりました。以下後手勝ちかと思いきや、進んで図13。
ここは△42金なら詰まずに後手勝ちでしたが、△32玉としたため、▲24桂、△同金、▲33歩以下の詰みが生じました。
しかし本譜は、△32玉に▲54角(図14)
ここも△43金打なら詰みませんでしたが、△43金としたため詰みが生じました。進んで図15。
ここで▲42金、△33玉、▲43金、△同玉に▲44歩が正に一歩千金の一手で、以下△33玉、▲42銀打、△44玉、▲55銀、△35玉、▲53角成、△24玉に▲33銀不成から▲44銀が好手で詰みとなります。
本譜は▲33歩としたため、△同玉で詰まなくなり後手勝ちとなりました。
二転三転の大熱戦で面白い将棋でした。