ついに羽生棋聖が永世7冠を達成しましたね。待望の竜王獲得です。
それでは本局を振り返ってみます。
途中までは先日のA級順位戦と同様の展開になることも考えられましたが、負けた渡辺竜側が△94歩の代わりに△31玉と手を変えました(図1)。
並みの人間は、ここで▲95歩や▲47金と指すと思いますが、▲45銀と仕掛けたのが衝撃の一手であり、本局の勝因とも言えるでしょう。
▲45銀に驚くのは、58金型であるため、一目△37角で駄目と思ってしまうからです。△37角を避けるために近年は47金型や48金型を採用します。また、△37角を打たせるにしても飛車を渡す展開になりやすいので、▲88玉と入っておきたいところでもあります。あえてこの形で仕掛けるのが常識を覆す一手であり、今シリーズの羽生棋聖の積極的な姿勢が現れた一手でした。△31玉と引いた形であれば行けると見た大局観は流石の一言です。
図1以下は、▲45銀、△55銀、▲25桂、△42銀、▲15歩、△37角、▲29飛、△46角成、▲49飛、△15歩、▲46飛、△同銀、▲34銀と進みました。
ここまであまり変化の余地がありませんが、ここまで来ると▲45角のような手段があることに加え、後手の46銀が中途半端な駒となっているので先手良しです。
図2以下、△86歩、▲同銀、△57銀成、▲同金、△59飛、▲88玉、△57飛成、▲68銀、△48龍、▲57角(図3)
△86歩に同歩と取るか同銀と取るかは状況に応じて変わりますが、相手が歩を持っている場合は、△85歩の継ぎ歩や△87歩として形を乱すような手があるため、同銀と取った方が良い場合が多いです。
△57銀成として遊び銀を活用しましたが、▲68銀に対して龍の行く場所が難しく(58龍は67角)▲57角が攻防の一手となりました。
図3以下、△49龍、▲12歩、△同香、▲13歩、△同香、▲同桂成、△同桂、▲同角成、△22金打、▲15香、△13金、▲67角、△19龍、▲13香成、△41玉、▲44歩(図4)
最後の▲44歩ではつい▲23成香としたくなりますが、△23同金と取られたときのために43の地点を開けておく方が寄せやすいということで、この辺りの寄せは流石羽生棋聖といった感じです。
図4以下、△94桂、▲23成香、△同金、▲43歩成、△86桂、▲同歩、△69角、▲84香(図5)
▲84香が最後の決め手で、以下△同飛に▲42と、△同玉、▲43銀打で投了となりました。
以下、△51玉、▲63桂、△61玉の時に▲71金と打てるようにしたのが▲84香の効果です。
これで永世7冠達成に加え、タイトル通算99期で節目の100期まであと1つとなりました。引き続き活躍を期待しております。
“竜王戦 羽生善治棋聖ー渡辺明竜王戦(竜王戦第5局)” への2件の返信